2014年6月22日日曜日

世界で後退する民主主義

世界で後退する民主主義
民主化が繁栄につながる時代は終わったのか。新興民主主義が次々機能不全に陥るなか、独裁体制の中国独り勝ちの皮肉
89年6月4日未明、天安門広場に戦車が入ってきたとき、1カ月以上にわたって続いた民主化運動もこれで終わりだと、誰もが思った。多くの学生や民衆が広場を後にする一方で、そこを動こうとしない人も数百人(あるいはもっと)いた。そこまでは予測できた。予想外だったのは、あれから25年たっても、中国の民主化が夢のまた夢であることだ。いや、もう夢でさえないかもしれない。当時は多くの専門家が、天安門事件とソ連崩壊によって中華人民共和国は存亡の危機にさらされるだろうと考えた。89年11月にはベルリンの壁が崩壊して東ヨーロッパの民主化が一気に進み、2年後にはソ連が正式に解体。世界中が民主化に向かって進んでいるように見えた。実際、一時的だが民主化のドミノ現象は起きた。しかし天安門事件から25年後の今、中国だけでなく世界中で民主主義は逆風にさらされている。エジプトでは11年、独裁的地位を30年近く維持してきたホスニ・ムバラク大統領が失脚。中東のど真ん中に民主主義国が誕生すると期待が高まったが、その期待は見事に打ち砕かれた。バラク後に実権を握ったのは軍であり、選挙で選ばれたムハンマド・モルシ大統領も就任1年で解任された。その一方で、軍のトップとして中心的な役割を果たしたアブデル・ファタハ・アル・シシ国防相は、先月末の大統領選に圧勝。ムバラクよりも独裁的な体制を築く恐れがある。エジプトだけではない。チュニジアを除き、11年の「アラブの春」に始まった中東の民主化運動はすべて混乱に陥ったか、息絶えたように見える。民主主義の混乱を最も劇的に示しているのはウクライナだろう。親ロシア派のビクトル・ヤヌコビッチ大統領が昨年11月、EU加盟に向けた手続きをほごにすると、親EU派の市民が反発。首都キエフの独立広場を中心に大規模な抗議デモを始めた。この騒ぎでヤヌコビッチは解任されたが、隣国ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は黙っていなかった。ウクライナは歴史的にロシアの重要な緩衝国だ。そのウクライナがヨーロッパの民主主義国の仲間入りをするのを許すわけにはいかない。プーチンはウクライナ南部のクリミア半島にロシア軍を送り込んでクリミアの分離・ロシア編入を推進。さらにロシア系住民の多い東部の混乱を煽るなど、あの手この手でウクライナをロシアの影響下に置こうと揺さぶりを掛けてきた。
勢いを増すポピュリズム
民主主義の後退は統計にも表れている。人権擁護団体フリーダム・ハウスによると、世界の民主主義国はここ8年間減少の一途をたどっている。これほど長期にわたり政治的な自由が縮小するのは、過去40年以上で初めてのことだ。政治的な自由が確保されている民主主義国の数は、冷戦終結後で最低となっている。今や世界地図は独裁国家や半独裁国家、それに民主主義国に見せ掛けた抑圧国家だらけだ。最近のクーデターや政情不安は、こうしたトレンドに衰える気配がないことを表している。アメリカも民主主義の危機と無縁ではない。共和党と民主党の極端な対立は議会を機能不全に陥らせ、唯一の超大国であり経済大国であるアメリカを過去3年間に2度もデフォルト(債務不履行)寸前に追いやった。
国民はそんな議会に失望している。CBSニュースの最近の世論調査によると、アメリカの登録済み有権者の43%が、民主党と共和党のどちらが議会多数派でも違いはないと考えている。また、連邦政府全般を信頼していると答えた人は17%しかいなかった(60年代は70%だった)。ヨーロッパの状況もさほど変わらない。政治不信が広がるに従い、選挙に出掛ける人が減っている。先月の欧州議会選挙の投票率は43・1%だった。
最近のヨーロッパ7カ国の調査では、回答者の半分以上が「政府をまったく信頼」していないと回答した。イギリスでは有権者の60%以上が、政治家は「いつも」嘘をついていると考えている。
人々は経済の先行きや失業の不安に怯えているが、政治家はそうした庶民の不安に無関心にみえる。だとすれば、ヨーロッパで危険なポピュリズム(大衆迎合主義)が勢いを増しているのも驚きではない。欧州議会選挙では、EU懐疑派(諸問題の原因を移民やイスラム教徒や欧州統合のせいにする傾向がある)がフランス、イギリス、デンマーク、ギリシャで勝利し、スウェーデンやドイツやハンガリーでも躍進した。
フランスの極右政党である国民戦線のマリーヌ・ルペン党首は、同党が全国的な選挙で初めて首位となったのを受け、フランスの次期大統領選に出馬する意欲を示している。
プーチンも中国が頼り
近年の状況を見る限り、ヨーロッパやアジア、北米アメリカなど世界中で民主主義がうまく機能していないようだ。アラブの春が起きた11年、人々は独裁体制に対して立ち上がった。だがそれ以降の混乱は、民主主義がもっと多くを与えてくれないことへの失望が原因になっている。今年だけでもボスニア、バングラデシュ、ベネズエラ、アイスランド、カンボジア、トルコなど多くの国で暴動や抗議行動、大規模デモが起きた。デモの件数だけでなく、それに参加する人の数も増えている。専門家らによると、06~13年に100万人以上が参加したデモは37件あったとみられる。インドで行われたデモの一部は、史上最大規模だった可能性がある。世界では現在、歴史上例のない規模で社会不安が起きていて、それが収束していく気配もない。
中国でもデモなどの抗議活動が急増している。しかしそれは主に地上げや環境問題が原因で、民主化などの政治的要求を掲げるものはゼロに近い。それでも中国共産党がこの25年間、政治的な締め付けの手を緩めたことはない。それどころか彼らは今や、世界一莫大な資金力と権力を持つ政党になった。ソ連と共に歴史のゴミ箱行きになるどころか、中国の共産主義体制と「権威主義的資本主義」という独特の経済システムは、欧米型民主主義に代わり得る最も強力な体制と考えられている。ウクライナ問題でロシアが欧米の制裁を受けたとき、プーチンが頼りにしたのも中国だった。先月中国を公式訪問したプーチンは、ロシアから中国に天然ガスを輸出する大型契約をまとめることに成功。ロシアは向こう30年間、総額40兆円相当を確保できることになった。89年6月、中国政府は民主化を求める人民を弾圧するという許されない罪を犯した。あれから25年がたった今、最大の皮肉は世界の民主主義体制がふらつくなか、中国の独裁体制は当時の責任を問われることもなくピンピンしていることだろう。
再生核研究所声明165(2014.6.19) 世論について

まず、世論について、wikipediaに従って、用語を確認して置こう:
世論(せろん、よろん、英語: public opinion)とは、世間一般の意見のことで、公共の問題について、多くの人々が共有している意見、もしくは大多数の賛同が得られている意見(考え)のことを指す。1つの問題を巡って世論が割れ、対立し合うこともある。
用語[編集]
日本では、戦前より、「輿論(ヨロン)」と比べるとはるかに頻度は低いものの、「世論(セイロン、セロン)も使用されていた(輿論の項参照)。使用頻度に関しては、戦前の代表的な国語辞典である『言海』などに収載されていないことが一つのめやすになるだろう。戦後の当用漢字表制定時に、「輿」が当用漢字表に含まれなかったため、新聞などでは「世論」の表記が使われるようになった。その後、それまでの「セロン」のほか、「世の中の論」という感覚での「ヨロン」という読み(湯桶読み)も一般化した。
概要[編集]
世論は多くの人々が共有する意見であり、社会の統合化の促進、支配者の統治の正当化のために世論は重要であると考えられている。特に現代の議会制民主主義に基づいた社会においては選挙を通じて世論が政治的支配の正当性を左右することになる。すなわち世論は政治的リーダーに対する国民の意思表示としての機能があると言える。しかし世論がどのような内容となっているのか、またそもそも世論といえるような共通意見が世間一般に存在するのか、を知るのは相当程度に困難なことであり、単なるマスメディアの意見、ないし願望が「世論」として紹介されることも多いし、またアナウンス効果による世論操作と言われることもある。
民主主義では 主権は国民にあり、 国民の意見に従うは大事とされるが、この文脈で、国民の意見の表現で しばしば世論が使われ、政治や政権に一定の圧力を加え、反映が期待される面を有している。また、選挙の動向の報告に世論調査が盛んに行なわれている。
まず、世論とは何かについて、議論して置きたい。世論は国民の意見、大勢の意見とするならば、その大勢の意見とは何かと問題にすべきである。厳格に全国民の意見の調査の結果としても、それは多くは不可能であるが、そのような単純な結果は、実体ある世論とは言えないだろう。 世論とは、国や政治を動かす力の総称であり、マスコミや言論界、政界の力を強く反映したものであると考えるのが妥当である。それらの背景にはもちろん、国民の相当な意見や、文化的な背景を反映しているが、狭義には マスコミや言論界の意見であると考えるのが妥当である。 この意味では、世論はそれを作る一部の階層の意見であると考えるべきである。 選挙における世論調査は 厳密にはサンプリングによる統計的な結果であるべきものが、意図的にマスコミなどに誘導される要素が有るが、そのような要素は 否定されるべきだとは言えない。文化的背景や国民の意見を加味した、マスコミや言論界には、国民を導く要素すら立派に存在すると考える。
ところで、民主主義の観点で、政治や政権が 世論に縛られるとは考えるべきでは無く、国民に選ばれた代表者は、高い立場から、個々の政治的な問題について、国民の世論など曖昧な意見に左右される必要はなく、自由に判断できると考えるべきである。そうでなければ、民主主義は 無責任政治、衆愚政治に陥ることになるだろう。まさに、間接民主主義の大事な観点は ここに有ると考えられる。
これはもちろん、選挙で選ばれた政治家が、多様な意見を参考にすることを、否定することを意味しない。逆にいろいろな意見を参考にすべきは当然である。
これを簡単に述べれば、国民の意見や文化を背景に、 マスコミや言論界が世論を構成し、国民と政治家を啓蒙し、政治を動かして行くべき と考える。マスコミや言論界が 大きな実際的な力、影響力を有するのは当然である。この意味でもマスコミや言論界の役割は大きく、 逆に責任も大きいと 絶えず、精進、自戒していくことが求められる。これはまた、国民には マスコミを絶えず、批判的にみていくような態度 が 求められることを意味する。
以 上
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