2014年6月27日金曜日

裁判員制度、終わりの始まりか

記事
• 町村泰貴
• 2014年06月27日 05:25
裁判員制度、終わりの始まりか
法制審部会:超長期裁判、裁判員抜きで審理へ
2009年5月に施行された裁判員制度の見直しを検討していた法制審議会(法相の諮問機関)の部会は26日、裁判員の確保が難しい長期間の裁判(超長期裁判)を裁判官だけで審理できるようにする規定を盛り込んだ要綱案を了承した。「超長期」の具体的期間は「基準を示すのは難しい」として明記しなかった。法務省は法制審の答申を待ち、今秋の臨時国会に裁判員法改正案を提出する。
裁判の途中で裁判員が不足した場合も同様に対象外とできるとのことだ。
既に、裁判員として招集された場合に、無断欠席しても罰則が適用されることはない。
出頭率は目を覆わんばかりの低さ。
裁判員制度は、英米の陪審をモデルとして無作為に選ばれた市民に義務として判断役を委ねるというものであったが、「義務」という色彩は限りなく後退している。もはや建前でしかない。
これでは裁判員の確保が難しくなるはずである。
そして今回の改正方向は、裁判員対象事件でも便宜的に裁判員抜きとすることを認めるもので、この例外を認めれば、例外が認められる範囲はどんどん広がるであろう。
というのも、裁判員による裁判の方が裁判官だけによる裁判よりも良い、良質だという確信というか信念というかが欠けているように思うのだ。
重大な事件に限って裁判員裁判を行うというのも、重大な事件で刑も重いから、より良い手続である裁判員裁判をという発想ではなく、単に裁判員確保の都合から対象事件を絞るために重大事件に限るという発想に変わってきたように思われる。死刑対象事件を裁判員裁判から外そうというのも同様で、裁判員に心理的負担をかけるからというのがその理由だが、裁判員の方が良い判断ができるという確信があれば、特に死刑事件などは裁判員裁判を必要とするはずである。要するに裁判員裁判を実施することで刑事手続がより良質なものとなるという信念、これがないから便宜論に道を譲るのである。そして裁判員裁判の方が裁判官裁判より良いという確信がなければ、裁判員裁判は誰得ということになる。なぜ、一般市民に負担をかけ、仕事も休ませ、その分のコストも国庫で負担し、裁判員への教示や各種の説明という手続的負担を裁判所が引き受け、さらに弁護人にとっても検察官にとっても「分かりやすさ」を追求しなければならないという負担を引き受け、挙句に反対派にはさんざん批判されるのに、裁判員裁判をしなければならないのか、さっぱり分からなくなるのである。今回の改正方向で裁判員対象事件に裁判員抜きの余地を認め、その理由が裁判員確保の困難にあるのだとすると、要するに裁判員の都合がつかなければ強制してまでやることはないという態度になったのであり、結局、誰得の裁判員制度は、やがて維持できなくなると思う。結局日本人は、お上の、つまり裁判官の裁判が一番偉いと思っていて、プロの法律家の間での裁判であるから口頭主義よりは書面中心主義で効率的に処罰をする制度が最善と考えているのかもしれない。
同僚の裁判よりも天の裁きの方を信頼しているのかもしれない。
再生核研究所声明 16 (2008/05/27): 裁判員制度の修正を求める
素人の意見を広く求めることは、古来から行われてきた重要な考え方である。しかしながら、それらを型にはめて、一律に行う制度は、制度として無理があり、社会の混乱と大きな時間的、財政的、行政的な無駄を生み、更に良い結果を生むどころか、大きなマイナスの結果を生むだろう。 幾つかの問題点を具体的に指摘すると
(1) 制度を実行し、進めるには大きな行政的な手間と時間が掛かる。特に財政厳しい状況で大きな無駄を生む。
(2) 一般の人が裁判に関与することは、はなはだ問題である。その様なことで、時間を費やす事を好まない人や、ふさわしくない人、また希望しない人が相当数現れることが考えられる。多くの人は、そのようなことで時間をとられたり、関与することに、耐え難い苦痛を感じるだろう。
(3) 選ばれた少数の人による判断が、全国的なレベルで公正さを維持するのは難しく、また公正な裁判を要求し、期待することには無理があると考えられる。それを要求するには 大きな負担を一般の人たちにかけ過ぎる。
(4) 大きな社会で、裁判において、一律一様の考えには、無理があり、ある程度の専門性を取りいれないと、運用上も、無理が生じると考えられる。
(5) 戦後60年以上も経っていながら、裁判が遅れることに対する批判はあっても、裁判制度や裁判結果に対する批判が殆どないのは異例であり、この観点からも日本の裁判制度自身は高く評価されるべきであって、改めるべき本質的な問題は生じていないと考えられる。
上記のような状況に鑑み、例えば一律の考えを改め、裁判に参加を希望する者を公募して登録しておき、その中から選んで参加して頂く等の修正を速やかに行うべきであると考える。少なくても、裁判に強制的に参加させるべきではなく、参加しない権利を明確に認めるべきであると考える。また裁判制度の問題は別にして、一般の裁判についても、従来は、密室で判決が検討されてきているが、広く意見を聞くことは必要であり、また逆に人々が意見を述べることができるようにしておくのが良いのではないかと考える。ご検討を期待したい。 以上。
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