交響曲第9番 (ドヴォルザーク)
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A. Dvořák, Symfonie č.9 1.věta, 2.věta, 3.věta, 4.věta - ペトル・ヴロンスキー指揮モラヴィア・フィルハーモニー管弦楽団(Moravská filharmonie Olomouc)[1]による演奏。Moravská filharmonie Olomouc公式YouTube。
Dvorak Symphonie Nr.9, 1.Satz, 2.Satz, 3.Satz, 4.Satz - Hans-Peter Manser指揮Vienna Sinfonietta Feuerhausによる演奏。Vienna Sinfonietta Feuerhaus公式YouTube(事実上)。
Antonín Dvořák:9.Sinfonie e-Moll 'Aus der Neuen Welt' - Christfried Göckeritz指揮Hochschulorchesterによる演奏。Hochschule für Musik und Theater Rostock(hmtRostock…ロストック音楽・演劇大学)公式YouTube。
交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」 - 横島勝人指揮SHOBIシンフォニーオーケストラによる演奏。尚美ミュージックカレッジ専門学校公式YouTube「SHOBI NET-TV」。
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交響曲第9番 ホ短調 作品95『新世界より』(英: From the New World、独: Aus der neuen Welt、チェコ語: Z nového svĕta)は、アントニン・ドヴォルザークが1893年に作曲した、4つの楽章からなる最後の交響曲である。古くは出版順により第5番と呼ばれていたが、その後作曲順に番号が整理され、現在では第9番で定着している。
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1 概要
2 作曲の経緯と初演
3 演奏時間
4 楽器編成
5 曲の構成
5.1 第1楽章 Adagio - Allegro molto
5.2 第2楽章 Largo
5.3 第3楽章 Scherzo. Molto vivace
5.4 第4楽章 Allegro con fuoco
6 『新世界より』が用いられた諸作品
6.1 歌への編曲
6.2 交響曲第9番が使われた作品
7 脚注
8 外部リンク
概要[編集]
ドヴォルザークによる自筆スコアの表紙
ドヴォルザークは1892年、ニューヨークにあるナショナル・コンサーヴァトリー・オブ・ミュージック・オブ・アメリカ(ナショナル音楽院)の院長に招かれ、1895年4月までその職にあった。この3年間の在米中に、彼の後期の重要な作品が少なからず書かれている。作品95から106までがそれである。
この作品は弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』、チェロ協奏曲と並んで、ドヴォルザークのアメリカ時代を代表する作品である。ドヴォルザークのほかの作品と比べても際立って親しみやすさにあふれるこの作品は、クラシック音楽有数の人気曲となっている。オーケストラの演奏会で最も頻繁に演奏されるレパートリーの一つでもあり、日本においてはベートーヴェンの交響曲第5番『運命』、シューベルトの交響曲第7(8)番『未完成』と並んで「3大交響曲」と呼ばれることもある。
『新世界より』という副題は、新世界アメリカから故郷ボヘミアへ向けてのメッセージ、といった意味がある。全般的にはボヘミアの音楽の語法により、これをブラームスの作品の研究や第7・第8交響曲の作曲によって培われた西欧式の古典的交響曲のスタイルに昇華させている。
作曲の経緯と初演[編集]
上述のようにこの曲は、ドヴォルザークのアメリカ滞在中(1892年 - 1895年)に作曲された。アメリカの黒人の音楽が故郷ボヘミアの音楽に似ていることに刺激を受け、「新世界から」故郷ボヘミアへ向けて作られた作品だと言われている。
「アメリカの黒人やインディアンの民族音楽の旋律を多く主題に借りている」という風にいわれることがあったが、これは誤解である。それはドヴォルザーク自身が友人の指揮者オスカル・ネドバルへの手紙に書いていることでも明らかである。その中で彼はこう言っている。“私がインディアンやアメリカの主題を使ったというのはナンセンスです。嘘です。私はただ、これらの国民的なアメリカの旋律の精神をもって書こうとしたのです”と。
1893年12月15日に楽譜が出版された。初演は1893年12月16日、ニューヨークのカーネギー・ホールにて、アントン・ザイドル指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック協会管弦楽団による。初演は大成功だったと伝えられている。
日本初演は1920年12月29日、東京の帝国劇場において、山田耕筰指揮、日本楽劇協会によって行われた。
演奏時間[編集]
第1楽章の繰り返し付きで約45分。ただし、第2楽章のテンポ設定によっては、繰り返しが付かない演奏でも45分を超えるものが存在する。
楽器編成[編集]
持ち替えは一部で存在するものの、全体としては伝統的な2管編成に近い。
この曲の中で、シンバルは全曲を通して第4楽章の一打ちだけであることがよく話題となるが、奏者についてはトライアングル(第3楽章のみ)の奏者が兼ねることが可能である。この一打ちが弱音であるためか、「寝過ごした」「楽器を落として舞台上を転がした」などのエピソードが存在する。実際クラシック初心者にとってシンバルの音はなくても気付かない、あるいはどこでなったのかわからない等と言われることもある。
イングリッシュホルンについては上述の通り、ドヴォルザークは第2オーボエ奏者の持ち替えとして作曲していると判断できるが、最近では単独のパートとして扱われることが多い。カーマス社の楽譜は、イングリッシュホルンを単独のパート譜として出版している。
チューバが使われているが、第2楽章のコラール部分のみ、合計10小節にも満たない。しかもバス・トロンボーン(第3トロンボーン)と全く同じ音(ユニゾン)である。これについては、初演時のオーケストラで第3トロンボーン奏者がバス・トロンボーンを用いていなかった(代わりにテナー・トロンボーンを用いた)ための代替措置に起因するという説がある。
第1楽章の再現部ではフルートの第2奏者によるソロが指定されている(理由は不明)。
フルート 2(ピッコロ持ち替え 1)、オーボエ2(イングリッシュホルン持ち替え 1)、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、トライアングル、シンバル、弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
曲の構成[編集]
アメリカの音楽を取り入れながらも、構成はあくまでも古典的な交響曲の形式に則っている。第1楽章で提示される第1主題が他の全楽章でも使用され、全体の統一を図っていることが特筆される。
第1楽章 Adagio - Allegro molto[編集]
第1楽章:Adagio – Allegro molto
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アダージョ―アレグロ・モルト。ホ短調、序奏付きソナタ形式(提示部の反復指定あり)。 序奏は弦の旋律によって始まる。クラリネットやホルンの信号的な動機に続き、木管楽器に冒頭の旋律が戻ってくると、突如として荒々しく低弦とティンパニ、クラリネットが咆哮する。盛り上がった後一旦静まり、アレグロ・モルトの主部に入る。第1主題は10度にわたるホ短調の分散和音を駆け上がる動機と、これに木管楽器が応える動機からなっている。第1主題前半の動機はその後の楽章にも度々現れ、全曲の統一感を出す役割を果たしている。弦が一気に盛り上げ、トランペットのファンファーレと共にこの主題が確保される。次いでフルートとオーボエによるト短調の第2主題が提示される[2]。これは半音の導音を伴わない全音での自然的短音階であり、黒人霊歌を思わせる旋律となっている。続いてフルートにト長調で歌謡的な小結尾主題[2]が出る(こちらを展開部や後の楽章での再現、調性等の観点から、第2主題と捉える解釈もある[2])。これは黒人霊歌『静かに揺れよ、幌馬車(Swing low Sweet Chariot)』に似ている、という指摘もあるが、これに対しては、アメリカ民謡借用説の例にひかれ、全体もそのように書かれているような印象が広まってしまったものであり、そのように解釈するのは不適切であるという見解もある。また、この主題は呈示部と再現部で一か所だけ付点音符の有無によるリズムの違いがあり、指揮者の解釈によって処理が異なる場合がある。この主題が弦に受け継がれて高潮し、提示部が終わる。提示部は反復指定があるが、ドヴォルザークの他の交響曲同様、あまり繰り返されない。展開部では第1主題と小結尾主題の2つの主題が巧みに処理される。再現部では第1主題が途中で遮られ、その後の主題は半音上がった調で再現される。調の変化で主題をより劇的にする巧みな主題操作が見て取れる。小結尾の主題に第1主題が戦闘的に加わるとコーダに入る。幾分不協和なクライマックスを迎えた後、トランペットのファンファーレに続き、短調のまま強烈なトゥッティで楽章を閉じる。
演奏時間は10~13分程度、提示部の繰り返しを省くと8~10分程度。
第2楽章 Largo[編集]
第2楽章:Largo
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ラルゴ。変ニ長調、複合三部形式。 変ニ長調は作品全体の主調であるホ短調からは遠隔調に相当する。このため、この楽章は前後の楽章との対比から独特の浮遊感がある。イングリッシュホルンによる主部の主題は非常に有名であり、ドヴォルザークの死後にさまざまな歌詞をつけて『家路』『遠き山に日は落ちて』などの愛唱歌に編曲された。中間部は同主調(異名同音で)の嬰ハ短調に転じる。クライマックスでは第1楽章の第1主題の動機が加わる。冒頭の主題が再現された後、静かなコーダが続いて終わる。よくインディアン民謡からの借用と誤解されもしたが、これは紛れも無いドヴォルザークのオリジナルである。
演奏時間は10~13分程度であるが、レナード・バーンスタイン指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏のように18分を超えるものもある。
第3楽章 Scherzo. Molto vivace[編集]
第3楽章:Scherzo: Molto vivace
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ホ短調、スケルツォ、複合三部形式。ABACABA-Codaの形で2つのトリオを持つ。1つ目のトリオは同主調のホ長調で、民謡風のものである。2つ目のトリオに入る直前には、転調のために第1楽章第1主題の動機を利用した経過句がある。2つ目のトリオはハ長調で、西欧風の主題である。この楽章のみトライアングルが使用される。コーダにおいても第1楽章第1主題が3/4拍子に形を変えて現れる。コーダでは、第1楽章から2つの主題が回想される。
演奏時間は7~9分程度。
第4楽章 Allegro con fuoco[編集]
第4楽章:Allegro con fuoco
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アレグロ・コン・フォーコ。ホ短調、序奏付きソナタ形式。 大きく2つの主題を持つが、それまでの楽章で扱われてきた主題も姿を見せる、統括的なフィナーレ。緊迫した半音階の序奏が一気に盛り上がり、ホルンとトランペットによる第1主題を導く。第2主題が現れる前に激烈な経過部が有る。この経過部の後半(演奏開始から1分55秒後ほど)に、全曲を通じてただ1度だけのシンバルが打たれる(弱音なので目立たない)が、これについてはまだ謎が多い。第2主題は、クラリネット(A管)とフルート、およびチェロを主体にした柔和な旋律である。そして、ヴァイオリンなどが加わると盛り上がって小結尾になる。第1主題の動機も加えたあと静まり、展開部に入る。小結尾で現れたフルートのトリルが多い動機に続き、第1主題の断片と経過部主題が続く。第2楽章の主題が印象的に回想され、第1楽章第1主題の回想に続いて、この楽章の第1主題が激烈に再現する。静まった後第2主題が再現し、気分が落ち着いたものとなる。それまでの主題の回想はなおも続き、今度は第1楽章小結尾主題と第1主題に続いて、フィナーレに向かってゆく。第1主題と経過部主題が同時に再現し、しばらく展開の後に第2楽章の序奏が壮大に回想され、静まった後第2楽章の主題と第3楽章の主題が同時に再現する。そしてコーダに入り、弦が壮大に第1主題を奏でると、管楽器は第1楽章第1主題と第2楽章の主題を不協和に奏して妨げるが、ホ長調に転じてこれを振り切り、テンポを上げて感動的に終結する。最後の1音はフェルマータの和音をディミヌエンドしながら出すというもので、指揮者ストコフスキーはこの部分を「新大陸に血のように赤い夕日が沈む」と評した。この言葉は彼がピアノを弾きながら曲のアナリーゼをするレコードに肉声が遺されている。
演奏時間は10~12分程度。
『新世界より』が用いられた諸作品[編集]
歌への編曲[編集]
この作品の第2楽章の主部の旋律を歌に編曲することは古くから行われており、1922年にはドヴォルザークの弟子フィッシャーによって「Goin' Home」のタイトルの英語詞による歌が出版された。日本では堀内敬三による『遠き山に日は落ちて』のタイトルの日本語詞が広く親しまれているが、フィッシャーの「Goin' Home」出版年から間もない1924年ごろ、宮沢賢治が『種山ケ原』と題した自作詩に第2楽章主旋律を付け歌っていたといい、これが日本語詞としては最初とも言われている[3]。そのほか野上彰も『家路』のタイトルで日本語詞を作っている。2004年には本田美奈子.が自作の日本語詞で歌った「新世界」を発表し、2009年には平原綾香が第2楽章をモチーフに自作の詩をつけて「新世界」として発表している。
フランスのセルジュ・ゲンスブールは、1968年に第1楽章の旋律の一部を引用した『イニシャルB.B.』を発表した。またイタリアのヘヴィメタルバンド、ラプソディー(後にラプソディー・オブ・ファイアに改名)がこの作品の第4楽章を用いた「The Wizard's Last Rhymes」を発表した。
日本のバンドであるシジマサウンズも、第2楽章をリミックスした「お帰り」を作成し1枚目のアルバム『クラチック』に収録しているほか、BIGMAMAが第4楽章を取り入れた「シンセカイ」、ゆずが2013年下半期の連続テレビ小説「ごちそうさん」の主題歌にしている「雨のち晴レルヤ」の間奏にも使用している。
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全曲を試聴する
A. Dvořák, Symfonie č.9 1.věta, 2.věta, 3.věta, 4.věta - ペトル・ヴロンスキー指揮モラヴィア・フィルハーモニー管弦楽団(Moravská filharmonie Olomouc)[1]による演奏。Moravská filharmonie Olomouc公式YouTube。
Dvorak Symphonie Nr.9, 1.Satz, 2.Satz, 3.Satz, 4.Satz - Hans-Peter Manser指揮Vienna Sinfonietta Feuerhausによる演奏。Vienna Sinfonietta Feuerhaus公式YouTube(事実上)。
Antonín Dvořák:9.Sinfonie e-Moll 'Aus der Neuen Welt' - Christfried Göckeritz指揮Hochschulorchesterによる演奏。Hochschule für Musik und Theater Rostock(hmtRostock…ロストック音楽・演劇大学)公式YouTube。
交響曲第9番 ホ短調 作品95「新世界より」 - 横島勝人指揮SHOBIシンフォニーオーケストラによる演奏。尚美ミュージックカレッジ専門学校公式YouTube「SHOBI NET-TV」。
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交響曲第9番 ホ短調 作品95『新世界より』(英: From the New World、独: Aus der neuen Welt、チェコ語: Z nového svĕta)は、アントニン・ドヴォルザークが1893年に作曲した、4つの楽章からなる最後の交響曲である。古くは出版順により第5番と呼ばれていたが、その後作曲順に番号が整理され、現在では第9番で定着している。
目次 [非表示]
1 概要
2 作曲の経緯と初演
3 演奏時間
4 楽器編成
5 曲の構成
5.1 第1楽章 Adagio - Allegro molto
5.2 第2楽章 Largo
5.3 第3楽章 Scherzo. Molto vivace
5.4 第4楽章 Allegro con fuoco
6 『新世界より』が用いられた諸作品
6.1 歌への編曲
6.2 交響曲第9番が使われた作品
7 脚注
8 外部リンク
概要[編集]
ドヴォルザークによる自筆スコアの表紙
ドヴォルザークは1892年、ニューヨークにあるナショナル・コンサーヴァトリー・オブ・ミュージック・オブ・アメリカ(ナショナル音楽院)の院長に招かれ、1895年4月までその職にあった。この3年間の在米中に、彼の後期の重要な作品が少なからず書かれている。作品95から106までがそれである。
この作品は弦楽四重奏曲第12番『アメリカ』、チェロ協奏曲と並んで、ドヴォルザークのアメリカ時代を代表する作品である。ドヴォルザークのほかの作品と比べても際立って親しみやすさにあふれるこの作品は、クラシック音楽有数の人気曲となっている。オーケストラの演奏会で最も頻繁に演奏されるレパートリーの一つでもあり、日本においてはベートーヴェンの交響曲第5番『運命』、シューベルトの交響曲第7(8)番『未完成』と並んで「3大交響曲」と呼ばれることもある。
『新世界より』という副題は、新世界アメリカから故郷ボヘミアへ向けてのメッセージ、といった意味がある。全般的にはボヘミアの音楽の語法により、これをブラームスの作品の研究や第7・第8交響曲の作曲によって培われた西欧式の古典的交響曲のスタイルに昇華させている。
作曲の経緯と初演[編集]
上述のようにこの曲は、ドヴォルザークのアメリカ滞在中(1892年 - 1895年)に作曲された。アメリカの黒人の音楽が故郷ボヘミアの音楽に似ていることに刺激を受け、「新世界から」故郷ボヘミアへ向けて作られた作品だと言われている。
「アメリカの黒人やインディアンの民族音楽の旋律を多く主題に借りている」という風にいわれることがあったが、これは誤解である。それはドヴォルザーク自身が友人の指揮者オスカル・ネドバルへの手紙に書いていることでも明らかである。その中で彼はこう言っている。“私がインディアンやアメリカの主題を使ったというのはナンセンスです。嘘です。私はただ、これらの国民的なアメリカの旋律の精神をもって書こうとしたのです”と。
1893年12月15日に楽譜が出版された。初演は1893年12月16日、ニューヨークのカーネギー・ホールにて、アントン・ザイドル指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック協会管弦楽団による。初演は大成功だったと伝えられている。
日本初演は1920年12月29日、東京の帝国劇場において、山田耕筰指揮、日本楽劇協会によって行われた。
演奏時間[編集]
第1楽章の繰り返し付きで約45分。ただし、第2楽章のテンポ設定によっては、繰り返しが付かない演奏でも45分を超えるものが存在する。
楽器編成[編集]
持ち替えは一部で存在するものの、全体としては伝統的な2管編成に近い。
この曲の中で、シンバルは全曲を通して第4楽章の一打ちだけであることがよく話題となるが、奏者についてはトライアングル(第3楽章のみ)の奏者が兼ねることが可能である。この一打ちが弱音であるためか、「寝過ごした」「楽器を落として舞台上を転がした」などのエピソードが存在する。実際クラシック初心者にとってシンバルの音はなくても気付かない、あるいはどこでなったのかわからない等と言われることもある。
イングリッシュホルンについては上述の通り、ドヴォルザークは第2オーボエ奏者の持ち替えとして作曲していると判断できるが、最近では単独のパートとして扱われることが多い。カーマス社の楽譜は、イングリッシュホルンを単独のパート譜として出版している。
チューバが使われているが、第2楽章のコラール部分のみ、合計10小節にも満たない。しかもバス・トロンボーン(第3トロンボーン)と全く同じ音(ユニゾン)である。これについては、初演時のオーケストラで第3トロンボーン奏者がバス・トロンボーンを用いていなかった(代わりにテナー・トロンボーンを用いた)ための代替措置に起因するという説がある。
第1楽章の再現部ではフルートの第2奏者によるソロが指定されている(理由は不明)。
フルート 2(ピッコロ持ち替え 1)、オーボエ2(イングリッシュホルン持ち替え 1)、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、チューバ1、ティンパニ、トライアングル、シンバル、弦五部(第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)
曲の構成[編集]
アメリカの音楽を取り入れながらも、構成はあくまでも古典的な交響曲の形式に則っている。第1楽章で提示される第1主題が他の全楽章でも使用され、全体の統一を図っていることが特筆される。
第1楽章 Adagio - Allegro molto[編集]
第1楽章:Adagio – Allegro molto
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アダージョ―アレグロ・モルト。ホ短調、序奏付きソナタ形式(提示部の反復指定あり)。 序奏は弦の旋律によって始まる。クラリネットやホルンの信号的な動機に続き、木管楽器に冒頭の旋律が戻ってくると、突如として荒々しく低弦とティンパニ、クラリネットが咆哮する。盛り上がった後一旦静まり、アレグロ・モルトの主部に入る。第1主題は10度にわたるホ短調の分散和音を駆け上がる動機と、これに木管楽器が応える動機からなっている。第1主題前半の動機はその後の楽章にも度々現れ、全曲の統一感を出す役割を果たしている。弦が一気に盛り上げ、トランペットのファンファーレと共にこの主題が確保される。次いでフルートとオーボエによるト短調の第2主題が提示される[2]。これは半音の導音を伴わない全音での自然的短音階であり、黒人霊歌を思わせる旋律となっている。続いてフルートにト長調で歌謡的な小結尾主題[2]が出る(こちらを展開部や後の楽章での再現、調性等の観点から、第2主題と捉える解釈もある[2])。これは黒人霊歌『静かに揺れよ、幌馬車(Swing low Sweet Chariot)』に似ている、という指摘もあるが、これに対しては、アメリカ民謡借用説の例にひかれ、全体もそのように書かれているような印象が広まってしまったものであり、そのように解釈するのは不適切であるという見解もある。また、この主題は呈示部と再現部で一か所だけ付点音符の有無によるリズムの違いがあり、指揮者の解釈によって処理が異なる場合がある。この主題が弦に受け継がれて高潮し、提示部が終わる。提示部は反復指定があるが、ドヴォルザークの他の交響曲同様、あまり繰り返されない。展開部では第1主題と小結尾主題の2つの主題が巧みに処理される。再現部では第1主題が途中で遮られ、その後の主題は半音上がった調で再現される。調の変化で主題をより劇的にする巧みな主題操作が見て取れる。小結尾の主題に第1主題が戦闘的に加わるとコーダに入る。幾分不協和なクライマックスを迎えた後、トランペットのファンファーレに続き、短調のまま強烈なトゥッティで楽章を閉じる。
演奏時間は10~13分程度、提示部の繰り返しを省くと8~10分程度。
第2楽章 Largo[編集]
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ラルゴ。変ニ長調、複合三部形式。 変ニ長調は作品全体の主調であるホ短調からは遠隔調に相当する。このため、この楽章は前後の楽章との対比から独特の浮遊感がある。イングリッシュホルンによる主部の主題は非常に有名であり、ドヴォルザークの死後にさまざまな歌詞をつけて『家路』『遠き山に日は落ちて』などの愛唱歌に編曲された。中間部は同主調(異名同音で)の嬰ハ短調に転じる。クライマックスでは第1楽章の第1主題の動機が加わる。冒頭の主題が再現された後、静かなコーダが続いて終わる。よくインディアン民謡からの借用と誤解されもしたが、これは紛れも無いドヴォルザークのオリジナルである。
演奏時間は10~13分程度であるが、レナード・バーンスタイン指揮イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏のように18分を超えるものもある。
第3楽章 Scherzo. Molto vivace[編集]
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ホ短調、スケルツォ、複合三部形式。ABACABA-Codaの形で2つのトリオを持つ。1つ目のトリオは同主調のホ長調で、民謡風のものである。2つ目のトリオに入る直前には、転調のために第1楽章第1主題の動機を利用した経過句がある。2つ目のトリオはハ長調で、西欧風の主題である。この楽章のみトライアングルが使用される。コーダにおいても第1楽章第1主題が3/4拍子に形を変えて現れる。コーダでは、第1楽章から2つの主題が回想される。
演奏時間は7~9分程度。
第4楽章 Allegro con fuoco[編集]
第4楽章:Allegro con fuoco
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アレグロ・コン・フォーコ。ホ短調、序奏付きソナタ形式。 大きく2つの主題を持つが、それまでの楽章で扱われてきた主題も姿を見せる、統括的なフィナーレ。緊迫した半音階の序奏が一気に盛り上がり、ホルンとトランペットによる第1主題を導く。第2主題が現れる前に激烈な経過部が有る。この経過部の後半(演奏開始から1分55秒後ほど)に、全曲を通じてただ1度だけのシンバルが打たれる(弱音なので目立たない)が、これについてはまだ謎が多い。第2主題は、クラリネット(A管)とフルート、およびチェロを主体にした柔和な旋律である。そして、ヴァイオリンなどが加わると盛り上がって小結尾になる。第1主題の動機も加えたあと静まり、展開部に入る。小結尾で現れたフルートのトリルが多い動機に続き、第1主題の断片と経過部主題が続く。第2楽章の主題が印象的に回想され、第1楽章第1主題の回想に続いて、この楽章の第1主題が激烈に再現する。静まった後第2主題が再現し、気分が落ち着いたものとなる。それまでの主題の回想はなおも続き、今度は第1楽章小結尾主題と第1主題に続いて、フィナーレに向かってゆく。第1主題と経過部主題が同時に再現し、しばらく展開の後に第2楽章の序奏が壮大に回想され、静まった後第2楽章の主題と第3楽章の主題が同時に再現する。そしてコーダに入り、弦が壮大に第1主題を奏でると、管楽器は第1楽章第1主題と第2楽章の主題を不協和に奏して妨げるが、ホ長調に転じてこれを振り切り、テンポを上げて感動的に終結する。最後の1音はフェルマータの和音をディミヌエンドしながら出すというもので、指揮者ストコフスキーはこの部分を「新大陸に血のように赤い夕日が沈む」と評した。この言葉は彼がピアノを弾きながら曲のアナリーゼをするレコードに肉声が遺されている。
演奏時間は10~12分程度。
『新世界より』が用いられた諸作品[編集]
歌への編曲[編集]
この作品の第2楽章の主部の旋律を歌に編曲することは古くから行われており、1922年にはドヴォルザークの弟子フィッシャーによって「Goin' Home」のタイトルの英語詞による歌が出版された。日本では堀内敬三による『遠き山に日は落ちて』のタイトルの日本語詞が広く親しまれているが、フィッシャーの「Goin' Home」出版年から間もない1924年ごろ、宮沢賢治が『種山ケ原』と題した自作詩に第2楽章主旋律を付け歌っていたといい、これが日本語詞としては最初とも言われている[3]。そのほか野上彰も『家路』のタイトルで日本語詞を作っている。2004年には本田美奈子.が自作の日本語詞で歌った「新世界」を発表し、2009年には平原綾香が第2楽章をモチーフに自作の詩をつけて「新世界」として発表している。
フランスのセルジュ・ゲンスブールは、1968年に第1楽章の旋律の一部を引用した『イニシャルB.B.』を発表した。またイタリアのヘヴィメタルバンド、ラプソディー(後にラプソディー・オブ・ファイアに改名)がこの作品の第4楽章を用いた「The Wizard's Last Rhymes」を発表した。
日本のバンドであるシジマサウンズも、第2楽章をリミックスした「お帰り」を作成し1枚目のアルバム『クラチック』に収録しているほか、BIGMAMAが第4楽章を取り入れた「シンセカイ」、ゆずが2013年下半期の連続テレビ小説「ごちそうさん」の主題歌にしている「雨のち晴レルヤ」の間奏にも使用している。
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