2015年5月24日日曜日

記事 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)2015年05月22日 11:16深夜のメール返信を迫る上司、提訴できるのか

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ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)2015年05月22日 11:16深夜のメール返信を迫る上司、提訴できるのか

会社支給のスマートフォン(スマホ)は、就業時間のけじめを消し去ってしまった。従業員にとって、午後8時に上司から送られてくる電子メールは家庭生活の邪魔になるだけではない。法的な問題にもなっている。
 実際に何件かの訴訟が起きている。iPhone(アイフォーン)やブラックベリー、その他のデジタル端末を使って、会社が就業時間外に無給で働くことを従業員に求めていると訴えるケースだ。これまでのところ、訴訟件数は比較的少なく、それに対する法律上の見解も限られている。だが法律の専門家たちは、判事の間にこうした訴訟に対する同情的な見方が出始めていることや、連邦レベルで労働規制の変更を予定していることなどから、今後は無給の電子メール労働に対する訴訟が増える可能性があると指摘している。
 米調査機関ピュー・リサーチ・センターによると、昨年、職場以外で定期的に何らかの職務を行ったインターネットユーザーの比率は約44%に上った。多くはスマホなどを通じて仕事をしたという。調査対象の約半数はデジタル技術が仕事効率の向上に役立っていると回答した一方で、35%はかえって働く時間が増えたと回答した。
 マクダーモット・ウィル&エメリー法律事務所のシカゴオフィスでパートナーを務めるリンダ・ドイル氏は、「事の始まりは緊急連絡用のポケットベルだった」と指摘する。「企業幹部のアシスタントや保守管理担当の技術者などが持っていたが、使うことはまれだった。現在は、『スマホがあるから、チェックを期待しているよ』と言外にほのめかされている感じだ」と話した。
 デジタル技術で可能になった職場以外での仕事について、法律上の見解はほとんどなく、この分野についての扱いを不確かなものとしている。訴状に「ブラックベリー」や「スマートフォン」という言葉が現れるようになってから10年もたっておらず、大半は個人の訴訟として提起されているか、集団訴訟としての扱いを拒否されているかのどちらかだ。
 結果、判例として有効な多数の従業員が関わった訴訟に結びついていない。加えて、集団訴訟に指定された訴訟は示談になる場合が多いと弁護士らは言う。企業側にとっては、長引く法廷闘争を継続するより、不払い賃金を従業員に払った方が安くつくからだ。
 だが、法律の環境は変わりつつある。連邦政府の規制では現在、1週間に455ドル(約5万5000円)、つまり1年間に2万3660ドル以上稼ぐ従業員は、残業代支給の対象にならない場合がある。その基準は従業員の職務、月給制か時給制か、就業時間外に働いた時間の長さによっても変わるものの、一般的に、広範な除外規定によって、残業代を主張できる従業員の数は抑えられてきた。
 労働省が早ければ今夏にも提示する予定の新たな規制は、対象となる給与の下限水準を引き上げ、何百万人もの米国人を新たに公正労働基準法の対象に含めるものになると予想されている。同法は従業員が残業代を受け取る権利を守る法律だ。同省は今月、行政予算管理局(OMB)に規則案を提出した。OMBは今後それを精査し、公表してパブリックコメントを求める予定だ。
 新しい規制が施行されれば、就業時間外のスマホによる不払い労働に対する訴訟は増える可能性がある。例えばTモバイルUSAの店舗で働く店員が2009年に起こしたような訴訟だ。店員たちはブラックベリーなどの端末を支給され、就業時間外に週10~15時間働くことを会社から求められたと主張していた。顧客や他の従業員からの電子メールに返信するためだ。Tモバイルは2010年に一定の金額(額は非公表)を支払って、店員たちと和解した。
 法律の専門家たちは、確実に残業代支給が認められるのは週給455ドル(年収2万3660ドル)以下という基準が、同じような訴訟を抑えてきたと指摘する。ホワイトハウスによると、現在、最大88%の給与取得者がこの規則により残業代の対象外になっている。基準が1週間に250ドルだった1975年には、この比率は35%だった。オバマ大統領は昨年、労働省に残業規制、とくにこの残業代支給の基準を修正するよう指示した。
 新たな規制では残業代支払いの対象となる基準が年収5万ドル前後に引き上げられる可能性があるとみられている。ミネソタ州ミネアポリスのニコルズ・キャスター弁護士事務所でパートナーを務めるポール・ルーカス氏は、「3万ドルかそれ以下の年収を稼ぐ人々は、就業時間外に電子メールで返信を求められる仕事をしている可能性はあまりない。だが年収5万5000ドルのレベルでは、その率は跳ね上がる」と話す。
 また、現在ではほとんど皆がスマホを持っているため、雇用主の多くは暗黙の了解として、従業員がいつでもメールを見ることを求めるようになっている。その結果、裁判所はこれを会社の方針と見て、集団訴訟を求めるケースも増えてきた。
 昨年、ジェフリー・アレン氏というシカゴ市警の警察官がシカゴ市を訴えたケースでは、アレン氏は市警が携帯デジタル端末を警官に支給し、「非番の日も一晩中、早朝に至るまで」連絡を取ることが求められたという。この件では裁判所がシカゴ市警の他の警察官に集団訴訟を認めている。
 シカゴ市では警察官の就業時間外の仕事にも残業代を支払っているが、アレン氏の弁護士であるポール・ガイガー氏によれば、アレン氏が所属していた組織犯罪局では、常に準備態勢でいながら残業代を請求しないことが求められたという。「もし残業代を請求すれば、署のエリート部隊にいられなくなるのは自明のことだった」と、ガイガー氏は主張する。
 Tモバイルの訴訟を担当した弁護士のダン・ゲットマン氏は、雇用主が法律に従って就業時間外の仕事を禁止できないのなら、会社支給のスマートフォンや職場外からコンピューターにアクセスできる権限などを渡すべきではないと話す。
 ドイツのフォルクスワーゲンでは夜中の電子メールを制限するために、午後6時15分から午前7時までの間、ドイツ国内の非管理職の従業員に電子メールを送らないようにサーバーを設定している。だか、そうした方針が米国に広く根付くことはまずないだろう。米国ではこうした訴訟を担当する弁護士事務所であっても、就業時間外に仕事の電話や電子メールを制限するのは難しいのだから。
By LAUREN WEBER

このような問題は新しい問題、深刻ですね。公正の原則で、相手の気持ちを考えるが基本では?勤務時間外は、回答しないは権利では?

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