2016年2月26日金曜日

重力波の発見は数学のおかげだった アインシュタイン方程式~数学の絶大なる威力 2016.2.26(金) 桜井 進 ランキング一覧

重力波の発見は数学のおかげだった
アインシュタイン方程式~数学の絶大なる威力
2016.2.26(金) 桜井 進
ランキング一覧


重力波直接「観測」がいかに偉業であるか。今回の米国のニュースからその興奮が伝わる。日本におけるKAGRA計画(大型低温重力波望遠鏡計画)による重力波直接「観測」の期待が高まるばかりである。本稿では今から100年前の重力波「発見」の偉業を取り上げたい。それはアインシュタインの偉業にほかならない。重力波「発見」の現場は宇宙ではなかった。アインシュタインは自らデザインした「数式」の中から重力波という未知の存在を探り当てた。重力波とは時空のさざ波である。よく使われる比喩であるが、もちろんこのことを本当に理解した者にはこれは適切な表現であるが、そうでない者にとっては実はよく分からない表現である。しょせん、時空という用語・言葉は「知っている」だけのことでしかない。時空および時空のさざ波~重力波はともに概念である。
概念は誰かによって概念たらしめられたがゆえに概念として存在する。時空および重力波の概念を確立した者こそアインシュタイン、その人である。
特殊および一般相対性理論の中で「時空」という概念が醸成していった。「概念」をうまく定義するのも容易ではないが、初めにぼんやりとした観念(直観)があり、それが昇華して明確となったものが概念である。はたして概念には新しい言葉―用語が付与され、辞書に載ることになる。「数」も「時空」も数学上、物理学上の概念である。観念(直観)を概念に仕上げることがいかに困難なことであるか。1915年にアインシュタインが曲がった時空という概念を確立するまでの軌跡を追いながら、アインシュタインが垣間見た「時空」を覗いて見たい。
アインシュタインの成功の核心は幾何学である。その源流は古代ギリシャ、紀元前300年頃の数学者ユークリッドまで遡る。彼の著書『原論』第一巻 冒頭は次の記述から始まる。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46167

定義(用語の説明)
1.点は部分をもたないものである。
2.線とは幅のない長さである。
3.線の端は点である。
4.直線とはその上にある点について一様に横たわる線である。
5.面は長さと幅のみをもつものである。
・・・
23.平行線とは、同一の平面上にあって、両方向に限りなく延長しても、いずれの方向においても互いに交わらない直線である。

公準(要請)
1.任意の点から任意の点へ直線を引くこと。
2.有限な直線を連続的に直線に延長すること。
3.任意の点を中心とする任意の半径の円を描くこと。
4.すべての直角は互いに等しい。
5.直線が2直線と交わるとき、同じ側の内角の和が2直角より小さいなら、この2直線は限りなく延長されたとき、内角の和が2直角より小さい側において交わる。

最後の赤字部(平行線公準と呼ばれる)が当たり前ではなかった。他の4つ公準から証明する試みが2000年もの間続けられた。この問題の解決が、最終的にアインシュタイン方程式そして重力波発見につながっていくのである。
同時期アルキメデスは曲線で囲まれた面積の計算―積分法の始まりに成功している。かくして、数学は体系化され概念がつくられていくこととなった。時代は飛んで1600年から1700年にかけて、ケプラーとニュートンが相手にしたのが天体の運動であった。
ニュートンが運動の概念を考えた理由は「星」にある。天の星々の運動の軌跡こそ曲線にほかならない。曲線の本質は刻々と変化する運動である。この様子を捉えるための道具・言葉が微分法である。また、運動を分割してたし合わせる方法~積分法の考え方によってケプラーは天体の運動法則を手にした。これら微分法と積分法という別々の道を辿ってきたものが実は表裏一体であることを見抜いたのがニュートンとライプニッツ(1646~1716)である。微分積分学の誕生は数学と天文学を一気に発展させることになった。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46167?page=2

「ガウスの驚異の定理」

ガウス(1777~1855)は、「外から俯瞰することなくして自らの世界が曲がっているかどうかを知ることができるのだろうか」と考えた。この問いに答えるべくガウスは、曲面論を微分積分学を用いた「微分幾何学」を創始した。
その中でガウスは曲面の曲がり方をはかる量―ガウス曲率を定義し、問いの答え「曲面を俯瞰することなく、曲面自身の言葉で曲率は定義できる!」という「驚くべき」結論に到達した。ガウスは自ら「驚異の定理」と呼んだ。
驚きはさらに続く。ガウスは微分幾何学の研究から、「非ユークリッド幾何学」を発見していた(公表はしていなかった)。

ユークリッドの『原論』の第5公準(前述の赤線部)は「平面上の任意の直線LとL上にない点Pに対して、Pを通りLと交わらない直線がただ1本存在する」という同値な命題に書き換えることができる。これが「平行線の公理」である。
ガウスはこの平行線の公理」を否定した「平面上の任意の直線LとL上にない点Pに対して、Pを通りLと交わらない直線が2本以上存在する」を仮定した幾何学を発見した。そして、ガウスによるブレークスルー―非ユークリッド幾何学と微分幾何学はさらなるブレークスルーを引き起こすことになった。リーマン(1826~1866)による、n次元多様体の理論―リーマン幾何学の誕生である。曲面といった2次元の世界をより一般化した「多様体」と呼ばれる幾何学の概念が誕生した。この中で、「計量」や「曲率テンソル」という曲線の長さや体積のもとになるものが発見された。

かくして、アインシュタイン方程式を語る準備が整った。

1905年の「時空」 アインシュタイン方程式誕生10年前

現在、この宇宙を構成する力は4つ~重力、電磁気力、弱い力、強い力であることが分かっている。その中でアインシュタイン(当時は重力と電磁気力しか知られていなかった)は重力を終生のテーマとした。1905年、26歳のアインシュタインは3つの理論―光量子仮説、ブラウン運動、そして特殊相対性理論を立て続けに発表。ところがこの中に重力は含まれていない。特殊相対性理論の「特殊」とは本来あるべき重力がない宇宙を考えるという意味でそう呼ばれる。
相対性理論とは「時空」を語る理論である。アインシュタインはこの宇宙が「4次元時空」であると結論づけた。ニュートンが考えていた時間と空間のイメージに対して大転換が迫られることになった。時間、空間そして質量は、観測者がいる慣性系(静止または等速度運動している座標系)によって相対的なものであり、光速度cだけが不変であるというものである。はたして、アインシュタインの帰結──質量mとエネルギーEの関係「E=mc2」に世界は驚愕した。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46167?page=3


1915年 一般相対性理論 新しい「時空」概念の誕生

しかし、次の相対性理論の建設には本格的な数学~幾何学を必要とした。この間、アインシュタインは人生で初めて数学を本気で勉強した。アインシュタインに数学を教えたのが、数学者マルセル・グロスマン(1878~1936)であった。
かくして1915年、新しい「時空」を語る言葉──リーマン幾何学を身につけたアインシュタインによって、「重力」を導く「一般」相対性理論が完成した。
その方程式は「重力方程式」や「アインシュタイン方程式」などと呼ばれる。偉大なるその方程式は、宇宙の大きさを計算し、ブラックホールを予言し、そして重力波の存在を導き出した。

では、アインシュタイン方程式を鑑賞していこう。まず、数式の左辺と右辺が明確な意味づけできることに注目する。「質量をもった物体がある」を表すのが右辺で、そのとき「物体の周りの時空の様子」を表すのが左辺である。
両辺が=(イコール)で結ばれるとは、「質量をもった物体がある」と「物体の周りの時空の様子」が分かるということを意味する。右辺「質量をもった物体がある」を詳しくみてみよう。それが「エネルギー・運動量テンソル」である。力や速度は大きさと向きをもつ。これが「ベクトル」という量である。それに対してエネルギー・運動量テンソルの「テンソル」とは「歪みの状態」を表す量である。例えば、段ボールの箱に力を加えると段ボールは変形するが、その状態を表すのがテンソルである。
テンソル(tensor)は張力(tension)に由来する用語。アインシュタインは一般相対論の論文において、その半分近くをテンソルの記述に費やしている。それほどに「時空」を語るうえでクリティカルな言葉であることがうかがえる。
さて、問題は左辺である。右辺がテンソル量なので、左辺もテンソル量である。アインシュタイン・テンソルと呼ばれるものは、リッチ曲率テンソルとスカラー曲率そして時空計量テンソルから成る。これらが「時空の曲がり」を表す。
さて、図に赤字で示されたリッチ曲率テンソルであるが、3文字のRμνからは到底想像できない正体をもつ。

図に示したように、Rμνを構成する2つパーツそれぞれがさらに長い数式なのである。さらに、その中のパーツ(図に下から2つ目の数式の青部分)は長い式を簡略したものである。結果として、RμνをΣを用いずにすべて書き下したとすると途方に暮れるほど膨大な数の項が現れてくる。アインシュタインはその「アインシュタインの規約」と呼ばれるテンソル計算に現れる膨大なΣ記号を省略する記法を考案した。そのおかげで3文字のRμνにまとまっている。同様に1文字のスカラー曲率Rもその正体も膨大な数の項で構成されている。ここにRμνの最初の成分R00を展開した式が紹介されている。ぜひご覧いただきたい。
結果として、1本のアインシュタイン方程式は実質10個の連立偏微分方程式でできている。「時空」がこのような姿で表現されるとは誰が想像しただろうか。
その意味で冒頭の図にあるアインシュタイン方程式を眺めるといかにシンプルなことに驚かされる。もはや芸術作品と言ってもいいだろう。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46167?page=4

幾何学の力を総動員して語られる「時空」によって、アインシュタインは次の結論に到達した。重力は、この連立偏微分方程式が解かれて得られる「時空の曲がり」として説明できる。アインシュタイン方程式を眺めているとユークリッドの『原論』から始まる2000年の挑戦の歴史が見えてくる。ユークリッド幾何学、微分積分学、ベクトル、テンソル、関数、座標、非ユークリッド幾何学、曲率、リーマン幾何学、微分方程式、・・・といった概念が流れついた大きな金字塔がアインシュタイン方程式である。
「曲がっている」ことを数学の概念につくり上げることがいかに困難であったか。微分積分法とリーマン幾何学である。人類は2000年かけて、「時空の曲がり」を表現することに成功したのである。

時空とは「4次元微分多様体」である。

アインシュタインは、ニュートンが考えた万有引力(重力)を、物質と時空の幾何学で説明してみせたのである。私たちが眺めているこの宇宙―時空は数学を通して初めてその正体が分かってきた。はたしてアインシュタインは自分の方程式を解いて、知られざる宇宙の姿を私たちに予言してみせた。光線の屈折、近日点移動、宇宙のスケール、ブラックホール、そして重力波。
あまりにも長い数式──テンソル計算の彼方につかんだ重力波が、今現実にその存在がキャッチされた! この驚きと感動を言い表す言葉を筆者は持ち合わせていない。
「世界について最も理解できないことは、世界が理解できるということだ」

(アインシュタイン)

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46167?page=5

数学の絶大なる威力:STEMからSTEAMへ

数学や物理学の概念とは、人の中で醸成される。人の外なる星の世界―物理学と、人の内なる数と形―数学の世界が激しく交差し昇華してうまれたのがアインシュタイン方程式である。
数学によって、私たちは手の届かないはるか彼方のことも手にすることができる。アインシュタインは重力方程式を手にしたときそのことを真に悟った。100年前、物理学者アインシュタインは、時空の概念を生み出す数学の威力と、数学によって初めて時空のリアリティを手にできることに驚いた。STEMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Math(数学)の頭文字をとった言葉。米国や英国ではこれら4つに重点をおいたSTEM教育が注目されている。
今回の重力波直接観測の成功は、それを支える様々な分野の成功を私たちに教えてくれる。なかでも、「数値相対論」の発展が挙げられる。
アインシュタイン方程式は非常に複雑な連立「非線型」偏微分方程式であるために、一般的に解くことはほとんど不可能である。そこで差分法とコンピューターを用いて、解くことになる。
実際の宇宙の現場で起きている天体現象を把握するには、アインシュタイン方程式に流体や電磁場についての方程式を加えたさらに大きな連立方程式を解く必要がある。
そうして、計算機の中で重力波の波形を予言することが可能になる。驚くべきことに現状は連星ブラックホールや連星中性子星の合体のような2体問題のシミュレーションが可能になってきた。
連立方程式(アインシュタイン方程式+α)の数値シミュレーションが予言される重力波の波形と実際に重力波検出器から観測した波形を比較することで、宇宙の遠い彼方で何が起きているのかを知ることが可能になる。まさにこの様子は、遺伝子解析にコンピューター(計算機科学や情報科学)が融合してバイオインフォマティクスという新しい学問領域が誕生したことを思い出させる。

アインシュタイン方程式+計算機(数値相対論)+重力波検出器 ≒ 重力波天文学

これまでアインシュタイン方程式が「強い重力場」でいかに成り立っているかは知られていなかった。今回の重力波直接観測は、数値相対論から得られる結論の正しさが確認されたことを意味する。つくづくアインシュタイン方程式の威力(精度と範囲)に驚かされる。
重力波検出器の製作を支えるのが、Technology(技術)とEngineering(工学)であることを考えると、「重力波の世界」はSTEM教育の最高の教材と言えるだろう。
アインシュタイン方程式は数学と物理学の見事な融合の産物であり、芸術と呼ぶにふさわしい作品である。いま、STEMにArt(芸術)を組み込んだSTEAMという考え方も生まれている。アインシュタイン方程式と重力波天文学はSTEAM教育の教材にもなる。筆者がアインシュタインの数式に魅了されるのは、そこに彼の芸術的センスを見ることができるからである。こうして誕生した新しい宇宙を見る目となった重力波天文学。これから宇宙の謎を解き明かすとともに、アインシュタイン方程式の真の輝きを私たちに見せてくれることになる。
これからも「数学と宇宙と人間」の関係が続いていく。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46167?page=6

再生核研究所声明287(2016.02.12) 神秘的なゼロ除算の歴史―数学界で見捨てられていたゼロ除算
(最近 相当 ゼロ除算について幅広く歴史、状況について調べている。)
ゼロ除算とは ゼロで割ることを考えることである。ゼロがインドで628年に記録され、現代数学の四則演算ができていたが、そのとき、既にゼロで割ることか考えられていた。しかしながら、その後1300年を超えてずっと我々の研究成果以外解決には至っていないと言える。実に面白いのは、628年の時に、ゼロ除算は正解と判断される結果1/0=0が期待されていたということである。さらに、詳しく歴史を調べているC.B. Boyer氏の視点では、ゼロ除算を最初に考えたのはアリストテレスであると判断され、アリストテレスは ゼロ除算は不可能であると判断していたという。― 真空で比を考えること、ゼロで割ることはできない。アリストテレスの世界観は 2000年を超えて現代にも及び、我々の得たゼロ除算はアリストテレスの 世界は連続である に反しているので受け入れられないと 複数の数学者が言明されたり、情感でゼロ除算は受け入れられないという人は結構多い。
数学界では,オイラーが積極的に1/0 は無限であるという論文を書き、その誤りを論じた論文がある。アーベルも記号として、それを無限と表し、リーマンもその流れで無限遠点の概念を持ち、リーマン球面を考えている。これらの思想は現代でも踏襲され、超古典アルフォースの複素解析の本にもしっかりと受け継がれている。現代数学の世界の常識である。これらが畏れ多い天才たちの足跡である。こうなると、ゼロ除算は数学的に確定し、何びとと雖も疑うことのない、数学的真実であると考えるのは至極当然である。― ゼロ除算はそのような重い歴史で、数学界では見捨てられていた問題であると言える。
しかしながら、現在に至るも ゼロ除算は広い世界で話題になっている。 まず、顕著な研究者たちの議論を紹介したい:

論理、計算機科学、代数的な体の構造の問題(J. A. Bergstra, Y. Hirshfeld and J. V. Tucker)、
特殊相対性の理論とゼロ除算の関係(J. P. Barukcic and I. Barukcic)、
計算器がゼロ除算に会うと実害が起きることから、ゼロ除算回避の視点から、ゼロ除算の研究(T. S. Reis and James A.D.W. Anderson)。
またフランスでも、奇怪な抽象的な世界を建設している人たちがいるが、個人レベルでもいろいろ奇怪な議論をしている人があとを立たない。また、数学界の難問リーマン予想に関係しているという。

直接議論を行っているところであるが、ゼロ除算で大きな広い話題は 特殊相対性理論、一般相対性理論の関係である。実際、物理とゼロ除算の関係はアリストテレス以来、ニュートン、アインシュタインの中心的な課題で、それはアインシュタインの次の意味深長な言葉で表現される:

Albert Einstein:
Blackholes are where God divided by zero.
I don’t believe in mathematics.
George Gamow (1904-1968) Russian-born American nuclear physicist and cosmologist remarked that "it is well known to students of high school algebra" that division by zero is not valid; and Einstein admitted it as {\bf the biggest blunder of his life} [1]:
1. Gamow, G., My World Line (Viking, New York). p 44, 1970.

数学では不可能である、あるいは無限遠点と確定していた数学、それでも話題が尽きなかったゼロ除算、それが予想外の偶然性から、思いがけない結果、ゼロ除算は一般化された除算,分数の意味で、何時でも唯一つに定まり、解は何時でもゼロであるという、美しい結果が発見された。いろいろ具体的な例を上げて、我々の世界に直接関係する数学で、結果は確定的であるとして、世界の公認を要請している:
再生核研究所声明280(2016.01.29) ゼロ除算の公認、認知を求める
Announcement 282: The Division by Zero $z/0=0$ on the Second Birthday

詳しい解説も次で行っている:
○ 堪らなく楽しい数学-ゼロで割ることを考える(18)
数学基礎学力研究会のホームページ
URLは http://www.mirun.sctv.jp/~suugaku

以 上


何故ゼロ除算が不可能であったか理由

1 割り算を掛け算の逆と考えた事
2 極限で考えようとした事
3 教科書やあらゆる文献が、不可能であると書いてあるので、みんなそう思った。

0 件のコメント:

コメントを投稿