2018年5月16日水曜日

裁判員制度開始からまもなく9年 見えてきた現状と課題は

裁判員制度開始からまもなく9年 見えてきた現状と課題は

5月で裁判員裁判が始まって9年になります。裁判員制度は、一般国民が裁判の過程に参加することで、裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映されるようになるとともに、国民の司法に対する理解・支持が深まり、司法がより強固な国民的な基盤を得る、という見地から導入されました。

これまでの裁判のあり方と比較した裁判員制度による効果とは
国民の裁判への関心は増えたことを実感
裁判員制度は、先に述べたように、国民の社会常識の反映・司法に対する理解を深めるといった目的から始められたものですが、裁判員制度により裁判傍聴などを含めた裁判への関心の高さは増えたという実感はあります。また、裁判員経験者によるアンケートでは今でも大変良い経験をしたとの回答は高い割合であるとのことです。

よりわかりやすい刑事裁判への改革が進んだ
これまで刑事裁判といえば警察・検察での取り調べにおける調書など、書類を中心としたいわゆる「調書裁判」が主流でした。筆者も学生の頃、ある刑事事件の裁判傍聴をしましたが、検察官が何やら書類を片手に被告人に見せて(傍聴席からは当然見えない)、何をしているのか(何を言っているのか)よくわからないという印象が強かった記憶があります。

裁判員制度では、裁判官・裁判員が法廷内で見聞きした内容に基づいて心証を形成する・連日開廷により集中して審理が行われる、というのがこれまで行われてきた裁判との大きな違いです。そのため、書類を読むことで内容を説明しなければいけない場合でも、できる限り全文朗読をするのが一般的になっています。また、重要な証人については、捜査機関が取り調べで作成された供述調書があったとしても、裁判所がなるべく生の発言を聞いてきちんと心証をとるため、証人尋問を行うことが増えてきているようです。

さらに、DVDによる取り調べの可視化や証拠の開示手続き、保釈率が全般的に2倍程度上昇したとの変化が見られています。加えて、量刑についても強姦致傷(現在は強制性交等致傷)事件、傷害致死事件については、量刑が重くなっている、他方殺人既遂と強盗致傷事件では執行猶予の割合が若干増加しているようです(ただし、統計は平成23年3月までのものです)。

このように、裁判員制度の開始により、国民の裁判制度に関する関心の高まりにつながった、裁判員制度自体も一定の理解が得られている状況である、刑事裁判もよりわかりやすい裁判への改革、量刑への国民意識の反映が見られるなどといった、一定の効果が出ているところではないかと思います。

浮き彫りになってきた現在の裁判員制度が抱える課題
他方で、裁判員制度が始まって年月が経つにつれ、問題点も浮き彫りになってきました。
いくつか課題を挙げてみます。

裁判員候補者の辞退率の上昇と出席率の低下
裁判員制度が始まってから裁判所に選定された裁判員候補者の辞退の割合が上昇している一方で、選任手続きへの出席率が年々低下してきているという点が問題になってきています。

特に高齢化の進んでいる県での辞退率は高くなっているようで、裁判員候補者の辞退率が7割を超える県もあるそうです。今後高齢化がさらに進むと裁判員候補者の確保が難しくなる地域が出てくることも予想されます。

他方で、労働人口を構成する年齢の場合には、裁判員裁判の審理が長期化するほど、職場を休んだり、家庭を空けて裁判員を引き受けることが難しくなりがちです。

裁判員制度を維持するには、国民が主体的に・積極的に参加することが何より必要です。法教育への取り組みや地域での働きかけも重要ですが、実際に裁判員を引き受けやすい環境とすることが職場などでもできるよう、何か抜本的な方策を立てる等しないと、裁判員候補者の辞退率の上昇や出席率の低下は見込めないのではないかと思います。

裁判員をすることでの心理的負担・ストレスへの配慮が必要
以前ある報道機関が裁判員経験者にアンケートを行ったところ、回答をした人の6割以上が裁判員をすることで心理的な負担を感じたという結果が出たとのことです。

最高裁判所では、対面でのカウンセリングや無料の電話相談を受けられる窓口を設けたり、裁判員の職務への不安を少しでも払拭できるように電話対応やパンフレットの送付をしているとのことです。裁判所によっては裁判終了後に事後的に精神面でのケアを図ったりするなどの対応をしているそうです。

この点については、裁判員に過剰に心理的な負担がかからないよう配慮しつつ、被害者側の意見なども踏まえて引き続き検討していくべき問題といえるでしょう。

守秘義務の範囲がやや不明確で心理的な負担になっていることも
裁判員法9条2項で、裁判員には評議(判決を決めるための話し合い)の秘密その他職務上知りえた秘密を漏らしてはならない、という守秘義務が課されています。もちろん、裁判員は公開の法廷で行われたことや、裁判員の感想は話してよいとされていますが、守秘義務の範囲がやや不明確なため、裁判員をしたことの経験を自由に語ることへの制約になっていたり、その分心理的な負担になっているとの意見もみられます。

せっかくの裁判員としての経験が裁判員制度の改善などに役立てられるよう、見直しをすべきとの議論があるところですので、引き続き検討が必要でしょう。

制度が根付くためには絶えず検討していくことが大切
裁判員制度については、すでに多くの国民が制度自体の認識をしているものの、今回解説したような課題もまだまだ抱えており、今後さらに国民の理解・支持が深まるような方策をとる必要があるでしょう。

裁判員制度が続く中で新たに見えてくる問題も出てくると思われますので、絶えず検討をしていくことがこういった制度が根付く上では大切なことといえます。

参照:最高裁判所ホームページ「裁判員制度の実施状況について」
同「裁判員等経験者に対するアンケート」
立法と調査2015年9月号「施行後6年を迎えた裁判員制度の評価と課題」

(片島 由賀:弁護士)https://news.mynavi.jp/article/20180508-627450/


再生核研究所声明 16 (2008/05/27): 裁判員制度の修正を求める

素人の意見を広く求めることは、古来から行われてきた重要な考え方である。しかしながら、それらを型にはめて、一律に行う制度は、制度として無理があり、社会の混乱と大きな時間的、財政的、行政的な無駄を生み、更に良い結果を生むどころか、大きなマイナスの結果を生むだろう。 幾つかの問題点を具体的に指摘すると

(1)  制度を実行し、進めるには大きな行政的な手間と時間が掛かる。特に財政厳しい状況で大きな無駄を生む。
(2)  一般の人が裁判に関与することは、はなはだ問題である。その様なことで、時間を費やす事を好まない人や、ふさわしくない人、また希望しない人が相当数現れることが考えられる。多くの人は、そのようなことで時間をとられたり、関与することに、耐え難い苦痛を感じるだろう。
(3)  選ばれた少数の人による判断が、全国的なレベルで公正さを維持するのは難しく、また公正な裁判を要求し、期待することには無理があると考えられる。それを要求するには 大きな負担を一般の人たちにかけ過ぎる。
(4)  大きな社会で、裁判において、一律一様の考えには、無理があり、ある程度の専門性を取りいれないと、運用上も、無理が生じると考えられる。
(5)  戦後60年以上も経っていながら、裁判が遅れることに対する批判はあっても、裁判制度や裁判結果に対する批判が殆どないのは異例であり、この観点からも日本の裁判制度自身は高く評価されるべきであって、改めるべき本質的な問題は生じていないと考えられる。

上記のような状況に鑑み、例えば一律の考えを改め、裁判に参加を希望する者を公募して登録しておき、その中から選んで参加して頂く等の修正を速やかに行うべきであると考える。少なくても、裁判に強制的に参加させるべきではなく、参加しない権利を明確に認めるべきであると考える。また裁判制度の問題は別にして、一般の裁判についても、従来は、密室で判決が検討されてきているが、広く意見を聞くことは必要であり、また逆に人々が意見を述べることができるようにしておくのが良いのではないかと考える。ご検討を期待したい。 以上。

アメリカの陪審員制度みたいに、
陪審員が決めた判決内容で結審って感じになれば話も違ってくるかもしれないが、
上級審に持って行って判決内容をひっくり返せるシステムでは、
やるだけアホらしいと思うわなw

ホント、日本の司法制度ってロースクールもそうだが、
カッコだけ外国の真似をして中身スカスカってパターンが多いわなw 

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