再生核研究所声明238(2015.6.20)西行花伝 ― 辻邦生、新潮社を読んで – 西行の恋と愛
著書の再読を始めたが、今回(前回声明233、234,235)は 西行の恋と愛について 相当深く具体的に表現されているので、それについて印象を述べたい。
西行は 最も有能で、好感の持てる、時代の寵児であり、世にも希に 最も純粋な恋と愛に生きた人物とみなせるだろう。相当に虚像と考えられる面は多い。小説では、恋と愛について深く触れていて、日本文学の得意な面が詳しく表現されている。 西行の恋と愛は結構、次の原理を振り返るまでもなく、単純で 純粋と言える:
再生核研究所声明 36: 恋の原理と心得
再生核研究所声明 124 (2013.8.20): 恋の機微 - 恋の極意
結婚し二人の子を儲けた豪族、高官の立場であるが、恋と愛は 女院との恋と愛の表現にほとんど限られていて その記述は深い。 しかし、その本質は 純粋であるがゆえに簡明である。
まず、恋であるが、それは現代の見方では、誠に奇妙にみえる。相手が、白河院に幼き頃から愛され、やがて天皇にも愛され、相当に自由な性の時代、結構多感で情熱的な高貴な 女性らしい女性である。 西行にとっては、誠に高貴な身分であるから、直接拝見できることさえ少なく、会話も交流も殆どなく、噂や微かな雰囲気くらいしか、交流がなかったと言える。 それが女院に召されるような形で一夜出会い、情を交わし、その後、殆ど身分の違いもあって、会うこともなく、恋は終わり、深い愛となって、生涯その想い出と愛に生きることになる。 その純粋さは驚くべきことである。 実際、 いつも女院とともに世界を観、感じて、その深さは如何なる愛よりも深かったと見なされる。 女院の想い出は 遠くの陸奥まで厳しい自然とともにいだき続けていた。実際その愛は、単に女院その人ばかりではなく その子供たち(男子は天皇になる崇徳院), 孫にも及び、その愛は 命を掛けても良いほど切ないものである。
上記声明に、愛の原理、機微が述べられているが、恋の契機、愛の姿は 最も理想的、最も深い形で実現されていると言える。 純粋に生きた西行は幸せな一生と見なせるが、出家の立場、他から見れば、 不運なあるいは愚かな愛とも受け止められかねない。 他方、女院の立場では、不遜な味方をすれば、いい人を手懐けて、自分の子供の時代まで、尽くして頂いたという感じになるだろう。 ― 女性にとっては、純粋ないい人を見つければ、次世代までも尽くしてくれる かけがいのない 大事なものを得ることができるのが恋であると考えることができるだろう。 原理としては、男女関係の原理を簡潔に表現しているのが 西行の恋と愛である言える。
このような恋と愛の形は、世に普遍的に見られる男女関係であると考えられる。― 男性は女性に奉仕し、使われる立場である。そのために 命さえ失いかねないのが 男性の宿命である。
西行の愛は余りにも切ないものであったと、深く悟られた境地に達せれたものの感じざるを得ない。
以 上
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